なぜ紛争地帯で音楽?よくいただくご質問

Music Beyondは、簡単な答えが存在しない、非常に複雑な環境で活動しています。
以下は、私たちがよくいただく質問と、それに対するMusic Beyondの考え方です。


1. 音楽は本当に何かを変えられるの?

音楽が世界を変えるわけではありません。
けれど、音楽は「人」を変えます。

私たちが現場で目にしているのは、人々が声を取り戻し、他者と関わり、行動するようになる変化です。
アーティストは演奏するだけの存在から、人を集め、場をつくる存在へと変わっていきます。
教師は、これまで環境や仕組みがなかった中でも、自信をもって音楽教育を継続できるようになります。
子どもや若者は、継続して通い、学び、関わるようになります。

一見小さな変化に見えるかもしれませんが、紛争の影響を長く受けてきた地域では、こうした変化こそが長期的な変革の出発点になります。


2. なぜ食料や雇用、医療ではなく、音楽なの?

人が生きるためには、「生きていくための手段」と「生きる理由」の両方が必要です。

食料、仕事、医療は、身体的に生きるために欠かせません。
しかし同時に、人は生きがいがなければ、前を向いて生き続けることができません。
何かを大切に思い、目標を持ち、日々を積み重ねていく理由が必要なのです。

音楽や芸術は、人が生きがいを取り戻すための、最も身近で力のある手段のひとつです。
集まり、練習し、協力し、未来を思い描くきっかけを与えてくれます。
それは、何世代にもわたって紛争によって日常が断ち切られてきた地域では、特に重要な役割を果たします。


3. Music Beyondにおける「リーダーシップ」って何?

Music Beyondにおいて、リーダーシップとは肩書きや権限のことではありません。
それは、「自分のコミュニティに責任を持つこと」です。

アーティストにとってのリーダーシップとは、自分がすでに持っている影響力を理解し、それを怒りや絶望、分断をあおる方向ではなく、人を力づけるために使うことです。
人々を建設的な形でつなぎ、別の未来を示すことでもあります。

教師にとっては、音楽教育を通して、子どもたちの集中力、感情表現、規律、創造性、自信を育むこと。
これらは教室の中だけでなく、人生全体に影響を与える力です。

若者にとってのリーダーシップは、「生きる目的」を見つけることから始まります。
定期的に通い、自分の声を見つけ、自分には意味のある役割があると気づくことです。

私たちにとって、リーダーシップとは「責任」です。どんな状況であっても。


4. 危機の中で、なぜアーティスト支援?贅沢じゃない?

紛争や抑圧的な状況下では、アーティストはしばしば最初に標的にされる存在です。
それは偶然ではありません。

この傾向は、アフガニスタン、イラン、シリア、ミャンマーなど、権威主義的かつ紛争影響下において多く見られてきました。
音楽家や作家、文化的表現者は、人々の考え方や価値観、つながりに影響を与える存在であるため、早い段階で沈黙させられることが多いのです。

アーティストは贅沢品ではありません。
恐怖と分断が支配する状況の中で、人々をつなぎ、対話の場を開く存在です。

だからこそ私たちは、アーティストを「娯楽を提供する人」ではなく、「コミュニティを支える担い手」として支援しています。


5. この活動は広げていくことができるの?

Music Beyondは、「広げる前に、深める」ことを大切にしています。

不安定な環境では、数字よりも信頼、継続性、そして自立したリーダーシップが重要です。
私たちは、外部が主導しなくても続いていく力を育てることを優先しています。

たとえばブテンボでは、少人数のアーティストが他の人を育てる「トレーナー育成」の取り組みが始まっています。
大切なのはスピードではなく、その活動が自律的に続いていくかどうかです。

地域に根ざしたモデルが確立されれば、他の地域へと応用していくことが可能になります。


6. アーティストは実際に生計を立てられるの?

アーティストとして生計を立てることは、世界中どこでも簡単ではありません。
長期的な紛争の影響を受けているコンゴでは、なおさらです。

Music Beyondでは、アルバム制作、コンサート、そしてPlayMBを通じて、アーティストが収入につながる機会へアクセスできるよう支援しています。
同時に、彼らがアーティストであり、コミュニティの担い手であり続けられることを大切にしています。


7. 成功はどのように測ってるの?

成功とは、これまで担い手でなかった人が責任を引き受けるようになることです。

アーティストが一人で活動するのではなく、周囲を巻き込み、組織するようになること。
教師が、外部の支援がなくても、自信と工夫をもって音楽教育を続けていること。
子どもたちが、好奇心を持ち、集中して、継続的に参加していること。

私たちは、単一の数字で成功を定義しません。
人々が自分自身と互いを信じ、コミュニティに責任を持ち始めること。
それが、Music Beyondにとっての成功です。

活動内容や組織情報は、透明性への取り組みの一環として、Candidを通じて公開しています。


8. 長期的なビジョンは?

私たちの長期的なビジョンは、コンゴ東部に、地域主導の文化センターをつくることです。
音楽、学び、創造がひとつの場所に共存する空間です。

それはアーティストだけのための施設ではなく、地域全体のための場所です。
教室や集会スペースに加え、井戸などの基礎的なインフラを整え、周囲の人々の生活にも貢献します。

派手な施設ではなく、地域に根ざし、地域によって運営される実用的な場所。
まず一つのモデルを丁寧につくり、それが本当に機能するなら、他の地域へと応用していきます。

私たちにとって未来とは、急成長ではなく、「続いていくこと」です。


最後に

Music Beyondの活動は、音楽そのものや、単発のプログラムにとどまるものではありません。
長年にわたり失われてきた尊厳や生きがい、そして人と人とのつながりを、その土地に生きる人々自身の力で取り戻していくこと。
音楽はそのための手段であり、常に中心にあるのは「人」なのです。